#91 トンデモ理論の起源とは?

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こうして夜中にネットをみると、端からみて何を言っているのかわからんトンデモ理論のようなものを振りかざしているページを、いくつも見つけることができる。
これは何だろう?
20世紀のシュルレアリスム美術に「自動筆記」という表現方法があったのを思い出した。
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トンデモ理論の歴史をさかのぼると、20世紀初頭のアンドレ・ブルトンという芸術家と、彼のはじめたシュルレアリスムという芸術運動に行き当たる。
シュルレアリスムというのは、ブルトンが当時はやっていた精神分析(これはフロイトがはじめた)の理論のなかから、「人間が言葉にして表現することができるのは意識にのぼったものだけで、それは倫理とか世間体とかいうものによって制御されている。本当は、意識にのぼらない真実のようなものが何かあって、人が行き詰まったときには、そういう無意識の情念のようなものを引き出してやればいい」という部分をとりだして、芸術的実践のための理論にしたもの。
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これと、ロマン主義から出てきた「人はそれぞれ素晴らしく天才的な想像力のつばさをもっており、それを自由に羽ばたかせるのが生きる喜びだ」という教えがあわさって、「自称天才の人たちが、テキトーな話を高速でまくしたてる」という伝統芸のようなものが生まれた。
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もちろん、精神分析の起源について、フロイトの考えのもとになった東欧の神秘主義ユダヤ教までさかのぼって考えることもできるし、ロマン主義の起源について、「ロマンティック」という単語をこの意味ではじめて使ったルソーの『孤独な散歩者の夢想』という本から、ルソーの考えのもとになった17世紀西欧の啓蒙思想までさかのぼって考えることもできる。