#126 バルカンブラス

♪ Fanfare Ciocârlia - Asfalt Tango

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こういうものについて、やっと語れそうだ。
バルカンブラスというのは、『アンダーグラウンド』って映画で話題になった音楽ジャンル。だいたい西欧(パリ、ロンドン、ウィーン、ローマの四角形の内側)で話題になると、商業資本に食い尽くされて、界隈が急につまらなくなるから、今どうなってるか知らない。かつて『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』って映画で話題になったキューバ民謡も、ハバマではいつしか観光客相手のクラブ限定の音楽になったそうだ。

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バルカンブラスは、米国的な産業資本主義の走狗たるマーチングバンド(とチアガールとアメフト!)、欧州的なブルジョア権威主義と内向きな地元志向の象徴たる交響楽団(と名門音楽学校!)、これらとの差が、濁った音や不思議な音階とあわさって、なんだか妙なものを聴いたような気になる。

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こういう民俗的意匠をまとった西洋音楽の変わり種のことを、「モンド・ミュージック」と名付けて、80年代後半の浮わついた東京で先を争うように収集した人たちがいたが、そういう収集家って、いやらしい。

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あと、発想の枯れてきた音楽家が安易に民俗楽器にたよっちゃうの。こちらはいやらしくはないが、さみしい。

#125 話し言葉と書き言葉

話し言葉と書き言葉。何かまとまった話を伝えたり、ぼんやり思ったことに一気に形を与えるときは、調子の良さが大切。流れるようなしゃべり。落語。話し言葉。しかし、それはときどき口から出まかせになる。音の調子の良さで数字や順番を変えたり、人の相槌に適当にうなづいて事実と違うことを喋ったりする。嘘つき。だから、ときどき、疑い深くなって、人に話したことを書き言葉にまとめる作業が要る。

#124 ものを買う

家電でも楽器でも、あらゆる商品について、量販店の本店やメーカーのショールームあたりで、技術史と今後の動向がわからん、というのが問題だなあ。売り場の若手が蘊蓄(でなくていいから知識)を身につける余裕がないのはわかりきっているが、「新製品が出ました。前との違いはわかりません」これでは、どうやって品物を選んでいいのかわからない。何年もネットや雑誌(これもまたすぐ品切れになるので大きな本屋に)や展示会をうろうろすることになる。結局、自分で本1冊書けるくらい勉強したらいいのだが、本を買う金もないし、図書館へ行くのも疲れるし、といううちに興味が薄れていって、その間に新製品が発売されて、いつになっても決められないサイクルに陥る。
しかし考えなしに買ったものは毎回ハズレ。アタリを引きたい。

#123 ライブ・イン・ハトヤ

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赤塚不二夫のアシスタントをしていた古谷三敏という漫画家が『BAR レモンハート』という作品を描いていて、大泉学園で同名のバーをやっているらしい。酒の蘊蓄と人情噺。いいな。
東京にいると、なんとなく情報過多で気持ちが混雑して、そういう漫画を読む気分にならないが、いなかで古いものを読みこんで、できれば気の合う仲間と存分に語り合ったら幸せだろう、と思う。
小学校の仲間にも、何人か、凝り性の男がいた。鉄道、釣り、プラモ、軍歌、ミステリ、モー娘。、中日、漫画、プロレス。錆びたトタン屋根と夕焼けの色。カレーの匂い。だいたいそういうやつは教師に好かれるタイプではなくて、今もきっと、どこかの町の片隅にひっそりと暮らしているのだろう。
今の流行ではないもの、都会人や権力者がすみやかに忘れ去っていくものが、そういう形で地下水脈となって、脈々と受け継がれていく。なんか鶴見俊輔みたいだけど、ここに希望がある。
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赤塚不二夫は1978年、伊東のハトヤで『ライブ・イン・ハトヤ』ってレコードを収録した。ジャズなんかの『ライブ・イン・XX』とかいう格好いいタイトルのパロディで下ネタ満載の歌謡曲をやったみたい。調べてみたら、昨年ある音楽家たちが『ライブ・イン・ハトヤ』ってライブを伊東のハトヤでやったらしい。まあ洒落がきいている。が、彼ら、ここ数年で「東京インディポップ」と呼ばれるようになった人たちに、おれは、ちょっと排他的な雰囲気を感じてしまう。赤塚不二夫の正統な後継者はワタシタチ!みたいな力みというか。まあ、今の時代、昔のいいものが、巨大な最終処分場のようなネットに埋もれてしまって、困っているわけで、お宝を先代から受け継いだ人はラッキー、自分で拾い集めた人はグッジョブ、というのはある。

#122 電脳高島平

たまにFaceBookを見るときの、おおきな精神的圧迫感。これは何なのか。おそらく、今日は近所を散歩するだけだったおれと、バイクを修理した彼(既婚)と、仲間と山へいった彼女(高度専門職)の日記が、同じ型枠のなかにはめこまれていて、自分の人生がどれほど他の人たちと似た、いやそれにも劣った、ありふれたもので、傍から見ると非常につまらないものなんだ、という思いにかられるから。これは大友克洋童夢』に描かれた団地のおそろしさに似ている。近代の牢獄。本日ここでFBを電脳高島平と名づけよう。

電脳高島平ってゲーム?全身性感帯ってバンド?
電脳性感帯ってゲーム?全身高島平ってバンド?

#121 芸術作品のたのしみかた

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芸術作品に対する関わりかた楽しみかたが、よくわからなくなってしまった。
「この人は広島うまれで耳がきこえなくて(ウソ)」ほど極端でなくても、人の名をつけて世に出る作品は、それぞれ固有の物語を背負っている。
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先日いなかで目にしたのは、「今年から、市民全員の努力目標が『クリエイティブシティ』に決定した。ついては、地元財界の協力のもと、国内外のアーティストを呼んで、ジャズとクラシックのコンサートとワークショップを開催することになった」という話。
そこには「東京生まれ。5歳からヤマハに通って、作曲コンテストで当選、ニューヨークで研鑽を積み、日本という己のルーツをたどって、尺八とピアノを融合したジャズを。。」とか、「大学でサックスを始め、地元で外科医をしながら仕事の合間にジャズを。。」とか、そんな話が山ほど載っていた。。
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こういう物語に意味を感じられない。「それなら物語なんか関係なくいい楽曲、いい音をさがしたらどうだ?」と言い出すと、鈴虫や雀の鳴き声のほうがいいなあと思う。全部ではなくても、ほとんどの音楽に比べて。では、人の作った音楽を楽しめる可能性がどこにあるかというと、もしかしたら、構造分析かも。コード進行がこうなっていて、ここに笛の音がはいって、とか。

#120 銀河のはちぇまで



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この夏どこかへ行きたいなあと思い、ぼんやり世界地図を見る。
涼しくて、人は少なく、安全で、空気や水がよく、おしゃれで、ちょっと風変わりなとこがいい。
プラハリスボンビルバオボローニャヘルシンキサンクトペテルブルクブエノスアイレスポートランド、札幌など魅力的な地名がならぶ。
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まあ、「おしゃれで、ちょっと風変わり」というのを除けば、地元なら安くすむ。
エアコンの効いた部屋にとじこもって。むずかしい本、たくさんの小説、アロマオイル、映画や音楽のディスク(旅番組がいいね)、パソコンなどを持ちこんで楽しむ。
運動不足になるから部屋でこぐ自転車もあったほうがいい。
これだけあれば銀河のはちぇまで行ける。