#123 ライブ・イン・ハトヤ

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赤塚不二夫のアシスタントをしていた古谷三敏という漫画家が『BAR レモンハート』という作品を描いていて、大泉学園で同名のバーをやっているらしい。酒の蘊蓄と人情噺。いいな。
東京にいると、なんとなく情報過多で気持ちが混雑して、そういう漫画を読む気分にならないが、いなかで古いものを読みこんで、できれば気の合う仲間と存分に語り合ったら幸せだろう、と思う。
小学校の仲間にも、何人か、凝り性の男がいた。鉄道、釣り、プラモ、軍歌、ミステリ、モー娘。、中日、漫画、プロレス。錆びたトタン屋根と夕焼けの色。カレーの匂い。だいたいそういうやつは教師に好かれるタイプではなくて、今もきっと、どこかの町の片隅にひっそりと暮らしているのだろう。
今の流行ではないもの、都会人や権力者がすみやかに忘れ去っていくものが、そういう形で地下水脈となって、脈々と受け継がれていく。なんか鶴見俊輔みたいだけど、ここに希望がある。
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赤塚不二夫は1978年、伊東のハトヤで『ライブ・イン・ハトヤ』ってレコードを収録した。ジャズなんかの『ライブ・イン・XX』とかいう格好いいタイトルのパロディで下ネタ満載の歌謡曲をやったみたい。調べてみたら、昨年ある音楽家たちが『ライブ・イン・ハトヤ』ってライブを伊東のハトヤでやったらしい。まあ洒落がきいている。が、彼ら、ここ数年で「東京インディポップ」と呼ばれるようになった人たちに、おれは、ちょっと排他的な雰囲気を感じてしまう。赤塚不二夫の正統な後継者はワタシタチ!みたいな力みというか。まあ、今の時代、昔のいいものが、巨大な最終処分場のようなネットに埋もれてしまって、困っているわけで、お宝を先代から受け継いだ人はラッキー、自分で拾い集めた人はグッジョブ、というのはある。