さまざまな遊び人と働き者


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大塚英志のやってる文学コミケに出してるサヨクの人、いつも反原発デモにかよっていて、界隈ではそれなりに知られた人に会ってきた。物腰はやわらかくていいのだが、ちょっと政治的な話になると、さっぱり。たとえばチリのアジェンデ政権について初めてきいたとか、ひょっとこみたいな顔して言うから、ちょっと気の毒になった。これが噂の「共産趣味者」ってやつか。めずらしいもん見せてもらった。
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それならば、うちの地元によくいる、からりとした性格の男、車の工場ではたらいてパチンコやってデリヘル呼んで、親が流れ者の連中でつるんで、看護師か美容師か建設事務員のおっぱいの大きい5歳下の娘と結婚して、軽自動車を夫婦兼用VIP仕様にして、さっさと子供つくって、実家のそばにローンで建売住宅かって、土曜は中学からの連中と河原を借りてフットサルして、日曜はJリーグ応援の帰りにジャスコの前で大渋滞、なんだかんだで年老いた母親の面倒はみてる、って連中のほうが、比べてみると、数段まともに思える。連中の誰かが脱サラして、ロードサイドでラーメン屋か飲み屋をはじめて、「努力と根性」みたいな紙を貼って、あとは地元での営業努力か。PTAや役所の飲み会を呼び込むとか。コケたらトラック運転手になる。
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あるいは、男がもっと内気で不器用な、つまりシケた性格の男らば、車か保険か住宅の営業員かスーパー店員やってて、AKBゆきりん推しで部屋にラノベを山積みして、ガンガン鳴ってるミュウヂックがおさまったところで、経理の事務員か介護士のやさしい子と結婚して、嫁さん微妙に料理がうまくて、弁当の飯のうえにラテアートならぬ「海苔の佃煮アート」を展開して、やはりこちらも胸がでかくて、しかし30年ローンで買った家は嫁の趣味でだんだん猫屋敷になる。嫁さんの健康食品や化粧品がどんどん増えていく。みたいな連中か。
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とはいえ、いなかにも働き者ばかりでなく、遊び人もいる。街中でカラオケバイトなりなんなりやりながら、休日や深夜にクラブでHIPHOPやREGGAEのスタンダード・ナンバーだけ掛けるDJとか。件のサヨク氏は、どちらかといえば、まぁそちらと同等か。
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別の種類の遊び人もいて、こちらは都会派を気取っている。役所・大企業の事務・地元メディアあたりに棲息している。「こんな田舎なーんもねぇよ」と言いながら、新刊書を読み、都会の旅案内を読み、小さなサロンをつくり、景色のよい国道を颯爽とジョギングし、地元の料理屋や商店を紹介する番組や雑誌をつくったりする。
地方都市の内部と外部の貿易のかたちを簡単に構造化すると、「農産物・工業製品」を輸出し「情報サービス・政治」を輸入する地方経済にとって、彼らは、情報サービス・政治を輸入する貿易商としての機能を担っている。
たとえば...
ことし29歳になる既婚女性のテレビ局員イシカワさんの愛読書は、ヤマザキマリ三浦しをん湊かなえあたり。
市役所でいちばんオシャレで唯一VOLVOに乗ってる未婚の39歳男性コバヤシさんの愛読書は、茂木健一郎かな。