サイバー・シティとマテリアル・ガール


1
広島カープのファンになるって、どういう感じなんだろう?
誰かが、ある場所を自分の故郷と認識する、というのは...現実的というより、むしろ記号的というか。
それに気づくと、ちょっと気恥ずかしくなっちゃうね。というのが、冒頭の動画。
現実の国道402号線。シティ・ポップスのなかのシーサイド・ライン。
三島由紀夫が『潮騒』で描いた伊勢湾、というより、乾くるみが『イニシエーション・ラブ』で描いた静浜海岸...を連想させる。現実と記号の相互に浸透している感じが、シティ・ポップ的であって。ベッタリした日曜の午後にシティ・ポップが投げ込まれる。私の叔母(母の兄の嫁)の部屋にあったマドンナ『マテリアル・ガール』のCDを聴いたとき、私はたしか中学生だった。日曜の午後。少しの清涼感。初期の村上春樹K-MIXで流行曲をエア・チェック...
2
東海道線でみた焼津駅の周辺の雰囲気が、ほどよく枯れていて、よい感じだった。もう少し涼しくなったら海沿いを散歩してみたい。山、海、家、工場、店、田、港、学校、病院...みたいな要素だけ分析的に見る*1のもいいけど、乾くるみの描いた、シティ・ポップをたよりにしたら...
3
建築家・都市論者の一部がつねに群れつどっている、あれが非常にうっとうしい。
法学者・法哲学者が原理的に制度論から逃げられないのと同様に、建築学者・都市論者は原理的に場所論から逃げられない。ここで、彼・彼女の眠る場所を「住居」と定義しよう。人は、16時間起きて8時間眠るとか、人によって違いはあるが、ねむくなると必ず眠る。つまり誰もが「住居」をもっている。眠っているとき、誰もが世界のなかのどこかの場所を占めることになるが、孤島にひとりぐらし、という状況は珍しくて、人は大抵ほかの人と近接して住んでいる。人とかかわる面倒くささと、社会的分業を一切せず全部1人で生活を営んでいくことと比べて、人とかかわるほうが楽だし普通だって、多くの人が納得しているのだろう。そういう事情を背景にして、あるいは所与の前提にして、建築家・都市論者は群れたがる。すぐ地域共同体主義になる。*2
おそらく私はそれを窮屈と思っている...ひとつ、おもしろそうなのは、場所論*3から考えてみたら、コンピュータ・ネットワークにつながれた21世紀初頭の「世界」はどう考えられるだろう?って話。「均質」「空虚」とかはナシにして。私のいなかに出来た不気味なジャスコだって、開店から数年して塗装も剥げてきて、「大きなスーパー」として人々の生活に溶け込んでいた。大概そんなもんだろう。比較対象としては電話・マスメディアが挙がる。電話とは「情報伝達の双方向性」が似ていて「面識のない人とのやりとり」「共時性」がちがう。マスメディアとは「面識のない人から言葉をもらう」「共時性」が似ていて、「情報伝達の一方向性」がちがう。
4
何かものを言ったり論争したりするなら、思想...ある種の規範的な物言いをすることになる。こうした規範的な物言いに根拠をつけるなら、「近代の社会において普遍的に成り立つ性質」*4のようなもの、あるいは「前近代の世間において普遍的に成り立つ性質」*5のようなものを基礎におくのが正しいのだろう。*6

毛利嘉孝*7 【都市歴史家のクリスティーヌ・ボイヤーは、『サイバーシティ』の中で、都市計画のモデルが機械からコンピュータへと変容していることを指摘している】 http://bit.ly/r0bMZk

5
関西在住のお嬢さんがエッチなメディアに出る作品を立て続けにみて、もやもやした。
彼女たちは時期がきたら、さっと引退して、普通の暮らしにもどり、かなりの確率で関西にとどまって生きていくのだろう。あんまり変なことしたら「お嫁に行かれない」なんてことも、ないのだろう。彼女のなかでは、「彼女を取り巻く関西の世界」と「東京の文化産業の世界」のあいだに繋がりはないということか。
須磨の海水浴場*8であそぶ女の子たちは、関西圏のテレビに出て誇らしげに若い感じを発散している。
何だろう?なんか、不思議な感じがする。

*1:各要素をみてその関わりを想像するってのも、結局はシステム論にしたがっているんだ...

*2:今の宮台みたいに、「中央の技術官僚による田子作の動員をやめて共同体自治をやろう」という政治的な背景なら、地域共同体主義もまだわかるけれど...

*3:いろんな場所のうち眠る場所を「住居」と定義した。それは人がいちばん無防備になる場所だ。ある場所への愛着というのは無防備ということと関係あると思う。

*4:それは機械論のようなものに近い。

*5:それは生態学のようなものに近い。

*6:普遍的でないものを普遍的といつわる場合もある。ロンドン・オリンピックの開会式で、「どこかのイスラムの国の代表選手として女性がはじめて出た」って話をNHKの実況が大きな声でやっていたが、「女が男と同じく運動選手になることは良いことだ」って規範が、普遍的に正しいとは言いがたい。

*7:このごろ、「1つでもダメなこと言った人の話はきかない」から「1つでもいいこと言った人の話はきく」に態度をあらためた。

*8:海水浴の歴史的な起源っていつだろう?東海地方や中国地方では、あんまり盛り上がっているって話をきかない。ドイツ人お雇い医学者の某氏が「水泳は体にいいよ」と言ったから、とか、聞いた気がするが...