アイロニカル

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東京の気ぜわしくて空虚な感じに辟易して、「いつか地元に帰りたい」と言う人はけっこういるが、彼らに対して、私はきわめて悲観的な見方をしている。

同胞という意識は、海外に住んでいる親類が時々、土産やお祝いを持って訪ねるときなら素晴らしいことだった。しかし、滞在して中国の一員に加わると、その人たちが特別の技能や知識を持っていない限り中国には重荷でしかなかった。ロマンチックな革命思想を胸にして祖国へ戻った者は結局、彼らがかつて軽蔑し捨てたシンガポールマラヤ連邦と似ている香港やマカオなどへの移住者になり、それですべてが終わったのである。(p.500)
李光耀回顧録 ザ・シンガポール・ストーリー』

彼らの身には、たぶん、このようなことが起きる。
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「ワンピ作者の被災者応援イラスト」
(http://vipsister23.com/archives/2841905.html)
いなかという場*1は、基本的にこの手の安っぽい話に「感動」する人ばかりで、私の体感では、アイロニカルな発想は、誰にもつうじない*2...

*1:「他の人々から与えられた価値体系に無自覚なまま従い、あるいは夢中になっていて、それゆえ価値観の多様性に乏しい人々が相互作用している場」と定義したら話が早いだろう。「他律的」ともいう。思うに、過去も現在も未来も、あらゆる時点で、人々というのは、ほとんどが「他律的」に生きているのではないか...それに息苦しさを感じる人は、カプセルホテルで壁の存在にいらだっているような感じに似ている。

*2:だからネットの隆盛があるのだが。