天国

倦怠 (河出文庫)

倦怠 (河出文庫)

1
気分はまあまあなのだが、関心の焦点が今日もさだまらなかった。ベタベタの地べたに暮らす人々の、それなりに生き生きした姿をみて、私は死んでもいい、あなたがた勝手にやれば?*1と思ったりする。この感じを扱いそこねるとdepressionの泥沼にしずむ。

2
録りだめてあるドキュメンタリー番組を見た。核開発をめぐる国際政治をイランの視点から描いたもの。国際政治には、選挙のような民主主義的な手続きはなくて、だからかどうか、露骨なパワーポリティクスになりやすい。「xx違反」という罪状がつけられて、国際的な政治力の弱い国が除け者にされていく過程は、見ていてきっついものがあった。

3
いなかを見てみて、心ひかれるものが何もなくて、誰もいなくて、私には都会暮らしが合ってると思った。都会だって何もないし誰もいないけど、すくなくとも、家という宇宙船のなかに鎖されていて、外には無人の荒野がひろがっている感じとは、ちがう。おそろしいのは、本屋にも図書館にもレコード屋にもレンタル屋にも映画館にも喫茶店にも美術館にも、私にとって身近な「あの感じ」はないから、だんだん個人的な好みというものがなくなって、私が消失していく、ドライアイスのように蒸発して消えるような感じがした。

4
「そこに何の意味があるの?」なんて言い出すと、やることといえば、個人的な思索と、それにもとづく行動だけになる。個人的な思索をはぶくなら、「何かが意味があるというのは、人々が意味があると考えているから意味があるのだよ」という話になる。今わたしの暮らすこの環境は、人類史上ほとんどの人々が生きてきた環境と同様、思索に適した環境とはいえない。思索がないなら、もう死んでもいいかな、って私が8割、生きていると、ときどき「いい感じ」があるから、それをたぐりよせようって私が、残りの2割。

5
倦怠感とかメランコリィとか、そういうものは、これまで色々と描かれてきた。ニヤニヤした感じが出るといいねえ。

*1:こういうふうに感じている人って、実は意外と多いんじゃないか?