池内恵『現代アラブの社会思想』

現代アラブの社会思想 (講談社現代新書)

現代アラブの社会思想 (講談社現代新書)

1967年の「6日間戦争」における、エジプトのナセル大統領率いるアラブ諸国軍の、イスラエル軍に対する敗北。
次にあらわれた、マルクス主義とその終焉。
その後に茫漠と拡がった、理想郷を夢見るだけで現実的な解決策を示せないイスラーム主義、そして終末思想の蔓延する絶望的な思想状況へ。
アラブ文明の思想的な停滞と混迷がよくわかると同時に、西欧に対する、アジアからとは違った視座が得られた。
イスラーム教はキリスト教ユダヤ教という「旧い」宗教を超えているという信念は、個人的な信仰のみならず政治や社会規範にも広くおよぶ性質を持っているから、他の文明に対して激しく衝突を引き起こす。