煙に巻く。
戦場において、誰かがいると組織の士気が下がる、という状況はよくあることで、戦争遂行のためには、当事者を消すのが手っ取り早い。
そのとき、当事者を消すのにも、皆の前で出来る限り残虐な消し方をするのが、士気向上にはいちばん効く。
まぁ、そういった形でリンチの対象にされる気配を感じた人間は、速やかに存在を群衆のなかに消して、目立たないように振る舞ったらよかろう。
血祭りにされてからでは、遅いから。
・・・
そんなことを思ったとき、煙草は、ニヒリストにとって最強の兵器だ。
己の素性を知らせたくない相手を、それとなく煙に巻くことができる。
のらりくらりとかわしてふっと消える、その消え方を修得したいなぁ。
宇野邦一『映像身体論』
![映像身体論 映像身体論](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/417uymcXXeL._SL160_.jpg)
- 作者: 宇野邦一
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2008/03/20
- メディア: 単行本
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ブックカバーが綺麗だから買った。印刷用紙もよかった。しかし内容が乏しかった。
映像と身体の関係性って、一見ホットなイシューだが、現象学的記述スタイル*1をとった時点で、失敗が運命づけられているような書物だった。
だって、映像体験って現象学つかうもんじゃないでしょう。
まず、趣味があまりにもスノビッシュでこんな鑑賞方法は10代で卒業していて然るべきだし、参考文献の選択センスにも稚拙さが見受けられる。
目を見はらせる特撮、すさまじい効果音、破壊、爆発、血も凍る恐怖やサスペンスは見ないときまっている。(p.22)
また、数学まわりの術語の用法が甘すぎるため、浅はかさが見え透いて痛い。
こんなもの出版するとはどういう了見だろう。まぁ手に取った俺が負けだったな。