#87 未来都市

メタボリズムの未来都市展──戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン

メタボリズムの未来都市展──戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン

1
おととし開かれた「メタボリズムの未来都市」って回顧展の図録をよんだ。
簡単に言うと、それは、鉄筋・コンクリート・プラスチックという新素材をつかって、変てこりんな環境で人間が活動できるような建物を作りたい、もっと言うと、死と再生を繰り返す生命のような建物をつくりたい、という試みであった。
2
きわめつけは東京湾にうかぶ海上都市。
海上にまっすぐ明かりがともる、人口1000万人の計画的な町。
このような海上都市計画は、詩的なイメージを福永武彦の『海市』という小説からとっている。
しかし、それは男と女の関係のなかにゆらゆらとたゆたう何かであって、もともと実在するともしないとも言いがたいものであった。
これが、あとあと問題をひきおこす。
建築は、結局のところ文学や芸術ではなく、実際に役に立つ道具をつくる行為だが、メタボリストたちによって実際につくられた空間をのぞいてみると、東京都庁もフジテレビも江戸東京博物館も、のちに彼らの意匠をまねて作られた各地の図書館や公共施設も、控えめに言って、そこに出かけてまったく楽しくないというのは、一体どういうことだろう。

3
もうちょっと涼しくなったらあちこち散歩して、いい感じの建物の写真をとってまわりたい。
いま有名な建築家の作品といわれるものの多くに、その空間にいて気持ちよくないような違和感がある。
こちらの思う気持ちよさのようなものを、その辺に生えてる野生の建物のあいだから、じっくり考えてみたい。