#85 連れてって


1
パトリック・マシアス『オタクインUSA』って本をよんでる。
OTAKUってのは、単純な出世ゲームしかないアメリカの地方都市に暮らす、おれみたいなメキシコ系3世の故郷喪失者みたいな連中にとって、生きるための神話、新たなる希望なんだ」って話に、涙がとまらない。
2
柚木麻子『終点のあの子』って小説の感想をネットでながめる。
「都会のお嬢様女子校での女同士の妬みや憧憬、感情の動きがリアルでした」って話に、またもや涙がとまらない。
ここに居場所を作らないと逃げ場がないと思い込むんだろうな。
3
山内マリコ『ここは退屈迎えにきて』って小説の感想をネットでながめる。
数年前、中学の同級生の女の子と酒を飲んだとき、同級生であきらかにいちばん輝いていたバスケット選手の男の子の近況について、「地元のオートバイ工場で経理の仕事してるらしいよ」って伝えたときの、落胆した顔を思い出した。
涙がとまらない。
4
性別を逆にしてみる。
あの頃なんかスゴかった女の子が、ただのオバちゃんになったのを見たら、何を思うだろう?
...まぁそんなもんねと思うだけだろうか。
5
女子高生のころセブンティーンのモデルしてた同級生の子が、ジャスコで子供の髪の毛をとった写真をFBあたりにあげてたら、むしろ安心するかも。
「同じ世界にいるなぁ」って、「この女は今おれを値踏みしていない」って考えると、挙動がちょっと落ちつく。
6
では、たとえば自分がいなかでロコドルのオタクをしていて、とくべつ推してた子が、ジャスコで子供の髪の毛をとった写真をFBあたりにあげてたら?
「違う世界に行っちゃった」って、「アイドルオタクみたいなのは全部きりすてて誰か運命の人をみつけたのか」って、かなりさみしくなるだろうな...
7
ここまでの話をまとめると、男は女に「同じ世界にいてくれる」ことを求める。
女は男に「違う世界に連れてってくれる」ことを求める。
これでは、男に特別な才能がない限り、必ずすれ違ってしまうなぁ...