#10 ヤンキーと土曜の夜の夢
「#9 フジパン」の答えはヤンキーであった。
- 作者: 斎藤環
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/06/30
- メディア: 単行本
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斎藤環『世界が土曜の夜の夢なら』ってヤンキー論をたちよみ。
名言がいくつかあった。
断言するが、たとえ日本中が廃墟になったとしても、真っ先に立ち上がって瓦礫を片付けはじめるのはヤンキーだ。
状況を建て直し、生存し、繁殖し続けることに特化したリアリズムという点においても、ヤンキー文化の強みは突出している。
彼らの基本原理は「気合を入れて生き延びること」
「ナメられないこと」を目的にしていろんなスタイルが生まれた
本書の最終章を仕上げつつ、とりわけ橋下徹の分析を通じて痛感したことは、ヤンキー文化が実質的に、日本社会における反社会性の解毒装置として機能している、という事実についてだった。
わが国においては、思春期に芽生えかけた反社会性のほとんどは、ヤンキー文化に吸収される。不良が徒党を組むさいに求心力を持つのは、「ガチで気合の入った」「ハンパなく筋を通す」「喧嘩上等」といった価値規範なのだ。しかしこれが擬似倫理的な美学であり、丸山眞男の言うところの空虚な「いきほひ」の変形でしかないことは、本書で十分に検証してきた。
こうした美学は、特攻服やよさこいソーランのような様式性をへて、フェイクの伝統主義=ナショナリズムに帰着する。つまり、青少年の反社会性は、芽生えた瞬間にヤンキー文化に回収され、一定の様式化を経て、絆と仲間と「伝統」を大切にする保守として成熟してゆくのである。われわれは、まったく無自覚なうちに、かくも巧妙な治安システムを手にしていたのである。
さらに著者による衝撃のトークショーの記事が...
http://atpage.hatenablog.com/entry/2012/10/02/214404