人気者


人気者は大変だ、という話。
数年前、地元名古屋に帰るたびに大規模な歓迎会がひらかれるという人気者の話をきいて、ささやかなことだけど自分も中学校の男子*1の友達ともっかい仲良くしようと思って、わりと親しかった人を数人うちに呼んだ。
1次会は郊外のショッピングモールのフードコートに入っている安いお好み焼き屋で、という企画にはあんまり気乗りしなかったので、後からみんなでうちに来て映画をみようということにした。
こちらは紅茶と珈琲をわかしてケーキを買って待っていて、映画もミニシアター系を中心に10本くらい選択肢を用意しておいた。
ところが、その間に連絡が入って、彼らがビデオを借りてきてくれたという。
ほう、と思って待っていると、なんと、全員で相談して『少林少女』を借りてきたという!もうその詰まらなさといったら!
終わったらコテンパンに酷評してやろうと思って心待ちにしていたら、意外とみんな面白がって見ていて・・・「やっぱりスペクタクルですなぁ」「迫力のアクション」「しびれるねえ」といった紋切型の批評がひとしきりつづいて。なんかもう、この人たち他に映画って見たことあんのかと。
まぁ、初めて映画をみにいったのは彼らと同じ中学卒業のときのスピルバーグで、そこから5年の間にこちらはどっぷりとミニシアター系に浸かり、あちらは実質的に何もみなかったという程度の差なのだが。
後日、その映画が「ぴあ映画生活」の得点表で下から5番目に入ってるのを見つけて、思い出してなんかすっごい爆笑した。
それ以来、何度かお誘いのメールが来たけれど、やんわり断っているうちにもう来なくなった。善良ないなかの若いおじさまたち。今もときどき集まっているのかな。彼らは彼らでしあわせな暮らしをしてほしい。
まぁ、こちらは人気者にならなくても、映画くらい自分でさがすし、料理くらいフレンチでもイタリアンでも和食でもBBQでもスイーツでも柴田書店の本みながら自分で好きに作るし、隅のほうでのんびり暮らそうと思った。友人は数人いれば充分かな。*2

*1:女子を呼んだほうが良かったかもね。話に詰まったらぜんぶ恋愛話=自己承認の物語に切り替えればいいし。

*2:つまり、人気者はなぜ大変なのかというと、互いに是認できないほど異なる価値観や理念をもつ者たちを「彼の魅力」のもとに組み合わせなければならないから。そんなことが可能なのかしらん。