阿部謹也『日本人の歴史意識』

日本人の歴史意識―「世間」という視角から (岩波新書)

日本人の歴史意識―「世間」という視角から (岩波新書)

日本社会における「世間」の個人に対する優越について、さまざまな古典を引きながら述べた1冊。
主な典拠は『日本霊異記』と井原西鶴浮世草子
とはいっても、世間って別に日本限定のものではないだろうよ。

「世間」の中に生きる人々の行動の原理は3つの原則によっている。贈与・互酬の原則と長幼の序、共通の時間意識である。(p.7)

「世間」の語源とされるサンスクリットのlokaは「壊され、否定されてゆくもの」を指している。(p.26)

親鸞の立場は「世間虚仮唯仏是真」であった。(p.73)

現在に至るまで日本で呪術を理論的にも実践的にも原理的に排撃した人は親鸞を除いてはいないのである。(p.57)

演歌は本来は自由民権運動の中で成立し、演説と並ぶ演歌であったのが、いつのまにか「世間」の中での苦しさなどを唄う歌に変化してきたものである。(p.194)