アデン・アラビア

アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)

僕は20歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない。

連休中ひまを見つけては読んでいた。
にぎやかさのなかに、透きとおるような孤独な塊がある。
それにしても、社会学の大学院に行く、というのは究極にナンセンスな選択らしい。
地方都市の私立大学教員になる予定の方から、その仕事の想像以上のしんどさを聞く。
事務・教育・研究の3つの役回りがあって、この順序でリソースが配分されるので、研究まではとても手が回らない、ということは聞いていたが。
地元高校へのプロモーション活動から、学生の就職斡旋、休日返上での入学試験やら資格試験の監督(大学に臨時収入が入るのです。)、外国語が少しでもできれば社会人講座の講師、果てはキャンパスの雪かきまでやるんだってさ。
そして所得は同期で金融・マスコミ・商社に入った人々の1/3程度らしい。なんだかな・・・
自分にとっては衣・食・住の充実が何より優先で、その他には本を読んで映画を見ていられればよくて、人並みな暮らしがおくれるなんて、そもそも期待していないのだけれど。
とはいえ、そこまで追いつめられた場合、精神が持ちこたえられるのか、不安になってきた。
最低限、生きてゆける限り、食べものが美味しいところでやっていけたらいいな・・・
すべてのフェトが終わり、虚無のなかへ放り込まれる日が、先取りして見える気がしている。
・・・きっとそれまで俗悪に思えた何もかもが、ささやかな人の営みという大枠のなかで、まばゆい残照を見せてくれるのだろう。