北村薫『スキップ』

スキップ (新潮文庫)

スキップ (新潮文庫)

17歳の女の子がタイムスリップしちゃう話。
それも過去にではなく、25年後の未来に。
それも単なる傍観者ではなく、姓のかわった<わたし>として。
筋立ては面白いのだが、読者としては、学校の先生になりたい人向けかなぁ。

遠い雨の音が、レコードの音と重なって聞こえる。終わりまで行けば、自動的に針があがるから、眠ってしまってもいい。でも、もうじき「恋とはどんなものかしら」になる。そう考えているうちに、旋律はとろけるように、
 わたしを包み、
 わたしを包み、
 今、聞こえるのはフィガロの歌う「もう飛ぶまいぞ」。

 わたしを包み・・・

《もう、飛ぶまいぞ、この喋々・・・・・・》

眠りにつくかつかないか、その甘い瞬間を紡ぐやわらかなことばが日本語から減ってきており、ネット社会においてこういう作家は貴重だと思う。