雨に唄えば。

詰まらぬ事に時間を削られてしまひ、暮色に染まるまちを陰惨な気持で塗り潰したまま地下道を降った。
他人の詰まらぬ身の上話の相手をする、そこに「希望」の片鱗を探す、それだけで恐ろしい勢いで時間は埋まってゆくものを、往きかえりの時間はさらに長く感ぜられ、東京駅の地下から千葉方面に向かう電車のプラットホームまで続く、長くて暗い、所々蛍光灯が脱け落ちていて、雨漏りが起こった隙間を覆っているビニールシートがきたならしく排気口の風になびいている、クリーム色の埃っぽい連絡通路のなか、毛布にくるまった路上生活者の脇をゆくときの、灰色、ベージュ、濃緑色・・・色褪せた毛布の群れを横目に見ながら、さしあたって設定した目的地は遠く、不気味な反響音が聴こえ、それが自分の足音だったことに気づき、ふっと足を止める、ここまでの一連の感覚を、テンポラリィなものだと納得した振りをしながら、通り過ぎていった。
じりじりと時間が焼け焦げていくような、窮屈さがあった。