・誤字訂正
「金斗雲」→「筋斗雲」
南陽堂」→「南洋堂」
すみません。


=○=


・Fade Out


=○=


・池袋の水族館
思うことがあって、結局水族館には行かなかった。
さまざまな形の幸せを、幸せでなく不幸であっても、ここで「人生」と呼んでしまうようなものの総体を、魚の生態まで含めて覗き見していたかったんだろう。
最近また趣味で映画を見ているのも、美しい女性の肢体がそこにあるからではなく、映画が孤独な自分を慰めてくれるからでもなく、単に自分は「覗き見」が好きなだけ、ということが判ってきた。
誰かの眼差しを覗き見していたい。
誰かと誰かの視線が交錯するのを遠い目で見ていたい。
覗き見をしている限り自分は満足でいられるわけで、別に「男」である必要はなく、「人」である意味すらない。
都市生活者でありさえすればよい。
そこで必然的に問題となる交換可能性への拡散からは、しかし自分の中ではある1点のみによって禦御されている。


「覗く存在」
この1点に尽きる。


繋ごうとした掌の温もりも、話し声の音の高さが少しだけ下がるときの「欠ける」ような不思議な感じも、夢と知りせば醒めざらましものを…ね。


=○=


閑話休題
中日の野球のいやらしさ、実は自分好みかもしれない。
ちまちまとチャンスを作りちまちまと得点してちまちまと勝ってしまう。
何よりあの「ビールかけ」と呼ばれる自己陶酔的で醜い行事の似合わないこと、それがいい。

三島由紀夫潮騒
…自己陶酔はこれくらいでないと。


=○=


ビールと言えば千野栄一『ビールと古本のプラハ』。
「黄金の虎」という店でピルスナー・ビールを6℃に冷えたまま飲むのが格別らしい。
千野さんはクンデラ『微笑を誘う愛の物語』『存在の耐えられない軽さ』なんかを訳した人。
訳書を全部読んだわけではないので断言はできないけれど、理知的なのに気取らず、あざとさを感じさせない名訳者だと、文体から個人的な印象を持っていた。
このエッセイは木場の現代美術館の図書館にあって、かねてから目をつけていたもの。
どこかでお目にかかる機会がないか調べてみたら、千野さん、もう亡くなっていたんだね。
冥福を祈ります。