#5 アデン・アラビア


1
茶道の教室にかようと季節を感じられて日本の伝統に触れられてうれしい、というようなことを言っている女の人に会った。外資系金融会社のプログラマ
そういうの苦手だから、こないだ、「あなたはアルゴリスティックなことがお好みのようですね」と言ったら、ぽかーんとされた。
だって、「同じことの繰り返しですね」「やってることがありきたりで魅力ないです」って言ったら怒っちゃうでしょう。
2
で、ここから話は鬱なほうへ直滑降する。
いまここで『アデン・アラビア』を書くとしたら、この題材になる。
3
世間にあふれる「同じことの繰り返し」の最たるものが、たとえば老人介護。
こないだ近所を散歩していたら、わりと高級そうな老人施設の前に人がたくさん出ていた。
全部で15人くらいかな。自動車が人の輪の中心にあって、みんな少し離れて立っていた。
ラクションが鳴って、青・黄・赤の3色のテープを巻いたワゴン車が霊柩車のうしろについて、車は無言のうちに出発した。近親者はそこにいなかったのだろう。
施設のなかに戻っていく若者たちの風貌が、なんとも言えない破れかぶれなパンクロッカーみたいな感じだった。表情や口調もひどく珍妙で。
晩秋の葬列...

驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

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