リリアン
外濠のまるで動かない澱みを眼下に見下ろして。
着付け教室、監獄の話、小さい頃に犬を叩いたこと・・・
そんな話をしながら。延々、辺りをうろつき回る。
「ここは私の地元なの。あの頃は橙色の電車が走っていたの。」
いつの間にやら、外濠の水はすべて入れ替わっているのだろう。
・・・
ぐるぐる回る。
ぐるぐる回る。
・・・
記憶の中を、記憶の中のケーニヒスベルクの街の中を、記憶の中のケーニヒスベルクの街の中から想像される限り十分と思われるモビリティという幻想の中を、ぐるぐる回る。
・・・
「世界の終わり?あまりにも遠くて、そんなこと想像できないなぁ・・・」
・・・
ミニマルな生活。
「巡礼圏」は、そこを心から気に入る場所に出会えたのなら、小さくて恥ずかしいことはないはずだ。
むしろ小さいほうがいい。
分身したい、とこのごろよく思うのだが、人は同時に複数の場所に存在することはできないのだから。